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教授のひとりごとBlog

輸血によるHIV感染

2013年12月1日

10年ぶりに輸血によるHIV感染が発生したことで、社会が少し揺れている。厚生労働省エイズ動向委員会の発表によれば、献血のスクリーニング時にHIV陽性と判明した事例は、昨年一年では68件(10万件あたり1.29件)、本年1月から9月までに55件(10万件あたり1.41件)。HIV感染者が献血に訪れることは決して珍しいことではないということだ。仮にNAT検査を現在の20件毎から1件毎に変更したとしても、感染が成立した直後はウイルスが検出可能となるまでしばらくのwindow periodがあることから(注1)、感染血が輸血に使用される可能性をゼロにすることはできない。冷静に考えれば、現在の医学水準では防ぐことがほぼ不可能な大変不幸な「事故」であった、と認識するのが妥当であろう。しばらくの間はセンセーショナルな報道が続くのであろうが、今回の事故をきっかけにHIV感染者への社会的偏見が増長されないことを強く望む。

(注1) NAT(=nucleic acid testing)検査は定量的なPCR法によってHIVウイルスを検出する検査。測定感度は末梢血20 mlあたり1コピー。献血者1名毎にNAT検査を行う場合、感染成立後HIVウイルスを検出できるまでの期間は5.6日と見積もられており、複数検体を用いて行うミニプールNATより3.4日早いとされている(Busch MP, Transfusion 2005;45:254)。

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